Nurse cleaning zebra device
成功事例

Hull University Teaching Hospitalは、リアルタイムに資産を可視化することでワークフローを改善

Hull University Teaching Hospitalは、2つの施設で年間約100万人の患者に医療サービスを提供しています。チームと予算にプレッシャーがかかっていたHull University Teaching Hospitalは、臨床スペース全体で重要な医療機器をより適切に追跡およびトレースするためのリアルタイム位置情報ソリューション(RTLS)を必要としていました。

Zebraの成功事例:Hull University Teaching Hospital

概要:医療現場の課題

2つの施設と130万平方フィートの臨床スペースにわたって主要な医療機器の管理、追跡、トレースを最適化する。

メリット/成果

  • 全スタッフがリアルタイムで資産を可視化
  • 患者ケアの向上
  • リスク管理の強化
  • 2,500人のスタッフで推定88,000時間の節約
  • 調達コストの削減
  • データに基づく購入決定
  • 機器のメンテナンスワークフローの改善
  • 患者追跡の計画的改善
  • 機器追跡の計画的改善
  • 機器ライブラリの作成

 Hull University Teaching Hospitalについて

Hull University Teaching Hospitals NHS Trust(以下「The Trust」)は、120,000平方メートルの臨床スペースにまたがる2つの主要施設を持つ大規模な病院です。医療のあらゆる主要領域をカバーしており、大学病院でもあります。年間収益は約7億2千万ポンドです。

救急救命(A&E)や外来診療所から長期の病棟入院まで、1年間に約100万人が通院しています。約8,000人の医療スタッフがサービスを提供しており、ハルおよびイースト・ライディング・オブ・ヨークシャー周辺にある60万人の通院区域で二次ケアを提供しています。

The Trustは複雑な組織です。また、慢性疾患の症例増加、人口の高齢化、より高価な薬剤、臨床スタッフの不足など、広範な医療システムにとって厳しい多数の問題にも直面しています。これらの問題が一体となってチームや予算にプレッシャーを与えます。これらの問題に対処するために、The Trustは新しいテクノロジーに目を向け、先駆的で革新的な医療提供者として知られています。しかし、テクノロジーのためにテクノロジーを導入することは決してありません。The TrustのScan4Safetyプログラムディレクター、Rachael Ellis氏は次のように述べています。「私たちは、最終的に、患者へのケアの向上に役立つと100%確信している場合に限り、改革プログラムに着手します。2018年にThe Trustに導入されたNHSのScan4Safetyイニシアチブに対するアプローチを評価した際、この点が最重要事項でした。」

課題

NHSのScan4Safetyイニシアチブは、医療業界初のものです。それは、NHS Trustに、GS1規格を導入し、医療現場のあらゆる人、製品、場所を一意に特定するためのガイダンスを提供します。このプロジェクトのパイロットは、英国の6つの「デモンストレーター」トラストに及びました。その結果、インプラントのトレーサビリティの向上や重要な機器のリアルタイム位置特定など、ケアと安全性の強化が主なメリットであることが示されました。NHS全体で予想されるコスト削減額は、7年間で10億ポンドと推定されます。

The Trustは当初、集中治療室(ICU)のScan4Safetyプログラムの一環としてRFIDの試験導入を計画していました。ICUの患者は、ベンチレータ、血圧モニター、心電計など、多数の機械で監視、サポートされる場合があります。患者を移動させる必要がある場合、機器は患者と一緒に移動します。したがって、多くの病棟や部門に移動するときに、その位置を追跡することは困難です。

「ICUで患者に使用するのに最適な機器を用意しておくことがきわめて重要であるため、まずこのユニットを検討することが理にかなっています。また英国では、Scan4Safetyの実施において、病院全体に及ぶこのサイズとスケールでのRFIDの大規模な導入は、まだ行われていませんでした。限られたエリアでテクノロジーを検証し、合理的な予算上の制約範囲内で2つの主要なサイトにそれを拡張できるかどうかを示す証拠を確保したいと考えていました」とEllis氏は述べました。 

この頃、パンデミックが発生し、通常の待機的手術のために通院している患者が減りました。その結果、Ellis氏が指揮したチームは、多くの隔離された病棟を訪問することができませんでした。さらに、新型コロナウイルス感染症患者には緊急に機器が必要なため、Ellis氏はRFIDテクノロジーを最優先事項に挙げることにしました。Ellis氏はこの機会を利用して、NHS Englandからの追加の自由裁量資金を申請しました。プロジェクトの重要性が考慮されて承認され、その後The Trustによってマッチングされました。追加資金により、プロジェクトチームは主要施設と患者に対面する全部門の両方にテクノロジーを導入できました。

これはリアルタイム位置情報追跡のために医療現場にRFIDを導入した、ヨーロッパで最大の導入事例であると考えています。最も複雑なのは確かですが、Zebraは優れたサポートを提供してくれました。このソリューションは最も柔軟性が高く、患者ケアの改善とともに、大幅な時間節約と調達コストの削減がすでに見られています。投資対効果(ROI)により、スタッフの時間節約とメリットを通じて、2年以内に元が取れるでしょう。また、患者の所持品の追跡など、さらに多くのアプリケーションを追加する計画があるので、将来も利益は増え続けるでしょう。

ソリューション

このような大規模な導入に対応できると見なされた少数のベンダーが、規格に準拠したNHS調達プロセスを通して入札に招待されました。しかし、The Trustが求めていたものを一言でまとめれば、「柔軟性」でした。このテクノロジーは何年にもわたって使用し続ける必要があり、追跡/トレースしたいものの範囲は時間の経過とともに変化することがわかっていました。

ディスカバリープロセスの一環として、このプロジェクトチームは小売や物流など、他のセクターのZebraの顧客と話をしました。これらのセクターは通常、多数の拠点にRTLSソリューションを導入し、何千ものアイテムを追跡しています。これらのディスカッションはRFID主導のソリューションへの信頼を高めました。

「資産追跡はほぼあらゆるものをカバーできることがすぐに分かり、当初予想していたよりはるかに幅広い資産をシームレスに追跡するソリューションを探しました」とEllis氏は述べています。「複数のベンダーと話をしたところ、Zebraが、そのクラウドベースのZebra MotionWorks™医療用機器追跡ソリューションにより、変化するニーズに対応することに最も前向きでした。その点で、このソリューションは柔軟にカスタマイズできる真っ白なキャンバスのようなものでした。当社の要件に耳を傾ける意欲と、汎用性があるということが、Zebra製品を、その顧客照会、テクノロジーとサポートのエコシステムとともに採用した主な理由でした。」

最初に、The Trustは、さまざまな問題を引き起こした資産の可視化欠如に対処することに着手しました。重要な問題は、医療スタッフがアイテム、特に手術予定表の次の手術で必要なアイテムを探すのに時間を割いていたことでした。患者の資産が別の病棟に移されていたり、知らないうちに医療エンジニアリング部門で日常メンテナンスが行われたりしていた場合がありました。4時間を対象に実施されたある時間動作調査では、資産を探すのに、臨床医を含む8人の手術室チームメンバーが合計3時間48分を費やしました。さらに、可視性の欠如により、手術用トレイなどよく使用されるアイテムが過剰購入されることが多かったり、バッファストックを提供するために滅菌サービス部門が迅速に処理を求められたりしていました。

Ellis氏のチームは、RTLSの機能ならびにアイテムを迅速に追跡する可能性を検討した際、プロジェクトの範囲を拡大することを目指しました。関心領域の一つは、患者の所持品のトレーサビリティでした。眼鏡や補聴器などのアイテムを置き忘れると、患者はテレビを見たり読書したりすることができなくなり、不便を感じることになります。 

これは連鎖反応も引き起こします。患者の身内が病院に懸念を話す必要があり、臨床医、清掃係、看護チーム、ポーターは時間をかけてアイテムを探す必要があります。NHSでは、患者の転帰の改善を目的としたGIRFT手法(「Getting It Right First Time(最初に正しく医療を行う)」)に重点が置かれています。患者の所持品にこのソリューションを使用することは、GIRFTの典型的な例であり、患者、身内、臨床医にとって大きな成功とみなされました。

Zebraの差別化要因:成果とメリット

The TrustはZebra、Tagnos、The Barcode Warehouseと密接に連携し、ソリューションを特定しました。追跡が必要なアイテムの数、アイテムのタイプ、高温または低温に耐える必要があるかどうか、ラベルを適用する材料のタイプ、システム上のユーザー数、スタッフがソフトウェアを直感的に使用できるように病院をゾーン分けする方法を調べました。また、RFIDリーダーを接続するために、パッシブまたはアクティブRFIDテクノロジーとWi-Fi™、あるいはネットワーク化ソリューションのどちらを使用するかも評価しました。 

The Trustは、パッシブRFIDテクノロジーを使用してアイテムにラベルを付けることを選択しました。ラベルのバッテリ交換頻度を増やす必要のあるアクティブRFIDソリューションと比べて、コストが下がり、保守が容易であることが、判断の主要な要因です。 

パッシブZebra RFIDラベルはリーダーの下を通過する必要があるため、The Trustは650台以上のFX7500固定RFIDリーダーと400台以上のアンテナを施設全体に設置し、包括的な追跡範囲を実現しました。The Trustは、各患者の出入りを可視化する必要があると判断しました。Wi-Fi規格とテクノロジーが将来的に変化すると、新しいワイヤレスネットワーク規格で動作するようにリーダーを更新する必要があり、その負担を軽減するため、リーダーは、Power over Ethernet(PoE)ケーブルを使用してネットワーク化されました。(すべてのリーダーを接続するには、6.2マイル(約10km)以上のケーブルが必要でした)。

臨床医はハンドヘルド型RFID読み取り機能へのアクセスも必要でした。Zebra MotionWorksに問い合わせて、アイテムが置かれていたゾーンを見つけ、モバイルデバイスを使ってその場所を特定します。また、臨時の在庫チェックを可能にし、将来的には患者の所持品の追跡などのタスクを管理することにも有用です。Zebraは医療現場向けに設計された高堅牢モバイルコンピュータで確固たる実績があるので、The Trustは320台のZebra TC52-HCモバイルコンピュータを選択することにしました。

Androidモバイルコンピュータは耐久性が高く、堅牢かつパワフルで、患者カルテの更新、スタッフ間のプッシュツートークサービス、バーコードデータのキャプチャなど、幅広いアプリケーションをサポートできます。医療現場向けに設計されたこのコンピュータの高度な医療グレードのプラスチックは、幅広い消毒剤による頻繁なクリーニングに耐えられます。The Trustのアプリケーションでは、デバイスの主な用途は、RFIDラベルの読み取りと、Zebra RFD8500ハンドヘルド型RFIDスレッドに物理的に接続されているか、Bluetooth®を介して同期されているモバイルコンピュータで患者ケア手順をスキャンして、ラベルの読み取りを可能にすることです。

「Zebraのデバイスは従来のハンドセットよりはるかに軽量であり、堅牢で、感染予防/管理要件のニーズを満たすことができます。TC52-HCを見たとき、感銘を受けました」とEllis氏は語っています。「より幅広い業界において、RFIDスレッドは口語的に「ガン(銃)」と呼ばれることが多いですが、病院では不適切だと感じています。私たちはそれを「ペン型スキャナ」(魔法の杖)と呼びます。なぜなら、画面上のボタンを数回タップし、ペン型スキャナを使いながら見つけに行くだけで、病院全体にわたりどんなものでも見つけることができるからです。病棟内を歩いていると「だれが魔法の杖を持っているの?」という人々の声を良く耳にします。」

プロジェクトの一環として、Ellis氏のチームは主要な機器の在庫を調べ、基準値を定めました。また、チームメンバーが病院内を都合の良いときに歩き回り、商品にラベルを貼ることができるように、スマートなトロリーソリューションを開発しました。これこそが大きな変革です。The TrustのRFIDチームは、必要な資産を見つけたら、ただちにラベル付けできるようになりました。資産をそのまま放置し、ラベルを印刷して戻ったら資産が移動してしまっているという恐れがなくなりました。「トロリーハブ」にはZebra ZT411産業用プリンタが取り付けられており、産業用RFIDラベルを印刷できます。

全体として、The Trustは現在、72,000を超える資産にラベル付けしており、毎週最大2,700の滅菌トレイにラベル付けを続けており、これはヨーロッパで最大級にRTLS用RFIDを医療現場に導入していると考えられています。ソリューションの重要性を考慮して、これには、モバイルデバイスの修理所要時間と固定リーダーの保守が保証されたZebra OneCareメンテナンスプランによるサポートがあります。

このプロジェクトは、日常業務、調達、患者ケアという3つの重要な領域にわたって、幅広いメリットをもたらします。毎日のワークフローに関して、臨床医は現在、機器を探す時間を大幅に削減しました。病棟までアイテムを追跡でき、ペン型スキャナを振り回して使うことで、探しているものを即座に突き止めることができます。

約2,500人のスタッフが週に約56分(シフト当たり14分に相当)、アイテムを探していると推定されています。一回当たりの探すのにかかる時間は平均4分未満です。これにより、従業員1人あたり年間約35時間を節約できます。これは2,500人のスタッフで87,500時間、2,187週分の勤務時間に相当します。これは明らかに大きな利益であり、約24ヵ月で投資対効果(ROI)を達成するという予測の中心です。また、The Trustは、全スタッフにアイテムの検索を依頼するために送信されるグローバルEメールをなくすことを目指しています。The Trustは、グローバルEメールを受信した5,500人中、50%(2,750人)が開くと推定しています。各人がこの電子メールを読み、次のステップを決定するのに3分かかっていた場合、これは電子メールあたり8,250分、すなわち137.5時間の無駄な時間に相当することになります。

調達では、The Trustはリアルタイムデータを利用して、在庫の内容と場所を正確に把握できます。また、過度に補充することなく必要なものを購入できます。また、最もよく使用されるアイテムがわかっているので、多く購入できます。レンタル資産の返却管理を改善することで、さらなるコスト削減が実現します。たとえば、The Trustは特定の患者のために肥満対応のベッドや椅子などの高価な物品を賃借りする場合があります。ベッドが移動され、置き間違えられたりする場合があります。

また、アイテムを返却する期日は見過ごしやすいので、レンタル会社から返却遅延に対して違約金が請求されることになります。今後、The Trustは医療用MotionWorksを使用して、レンタル機器を追跡し、返却期日になると自動的にアラートを受け取ることができるので、追加の請求が回避されます。

Ellis氏と彼女のチームにとって重要指標である患者ケアに関して、メリットは多面的です。計画されている患者の所持品追跡は、アイテムの紛失を防ぎ、モノを探すのに時間をかける必要のある患者、その家族、臨床医のストレスを軽減します。手術がキャンセルされる可能性も低くなります。たとえば、手術用トレイが置き間違えられることがあり、見つからない場合は手術がキャンセルされる可能性があります。デスクトップPCまたは医療グレードのタブレットでトレイを検索し、ペン型スキャナを使って、保管室や手術室の廊下で見つけることができるようになりました。たとえ間違った場所にあったとしても、見つかることになります。これは患者にとって大きなメリットです。滅菌トレイや器具が紛失したために、手術が取り消されることはないからです。さらに、リスクを軽減することも重要です。たとえば、心臓手術器具トレイを落とした場合、別のトレイを数秒で見つけることができるので、重要な手術の遅れを最小限に抑えることができます。

将来を見据えて、The Trustには汎用性の高い資産追跡システムを導入する予定があります。新しいアプリケーションが導入されるにつれ、メリットはさらに増大します。これらには、患者の所持品の追跡、リアルタイムの在庫へのレンタル装置の追加が含まれます。 

ソリューションについてEllis氏は次のように結論付けています。「システムは使いやすいので、同僚はすぐにそれを取り入れました。私にとって最大の成果は、患者ケアの明確な改善です。必要なときに常に適切な機器が手元にある場合、最終的に入院日数を短縮でき、素晴らしい結果になります。時間の節約も注目を集めており、RFIDは、他のトラストに導入される大きな可能性を秘めています。病院は多くのレガシーシステムや建物に加え、法的および患者ケアの必須要件を抱える複雑で圧力のかかる環境であるため、これは多くの障害を伴う厳しいプロジェクトでしたが、今後数年間にわたって業務を改善するより多くのアプリケーションを追加していく中で、プロジェクトと柔軟性をもたらす汎用的基盤に私は満足しています。」